「御社、若い方が多いですね」
会社見学や面談でよく言われます。ありがたい言葉なのですが、正直に言うと、私はこの言葉を素直に受け取らないようにしています。
なぜなら、「若手が多い」は、それだけでは何も証明していないからです。
若手が多い会社には二種類あります。若手が育って残っている会社と、上が辞め続けているから相対的に若いだけの会社。IT業界、とくに私たちのようなSES・受託の領域では、後者も珍しくありません。求職者から見れば、この二つは外から区別がつきません。
だから今日は、「若い会社です」という話ではなく、若手が入って、育って、残るために、私たちが何を仕組みとして持っているのかを書きます。数字と制度で書きます。そのほうがフェアだと思うからです。
1. まず、事実から
日本開発のIT事業部は、この2年で在籍18名から32名になりました。目標として掲げた「30名」を超えての着地です。売上も前年比で約25%伸びています。
増えた分の多くが、未経験または経験の浅い若手です。中途採用でシニアを大量に採って数を作ったわけではありません。
ではなぜ、若手を採って、若手が残るのか。理由は5つあります。
2. 理由①:育成が「気合い」ではなく「20年続いた型」になっている
私たちには「ゼロからエンジニア」という育成プログラムがあります。始めたのは約20年前。これまでに50名以上がここを通って現場に出ています。
20年という数字が意味するのは、「熱意ある先輩がたまたま面倒を見てくれる」状態ではない、ということです。誰が担当しても、同じ水準まで引き上げられるカリキュラムがあるということです。
未経験採用をしている会社は世の中にたくさんあります。ただ、「採用はするが、育成は現場任せ」という会社も同じくらいあります。研修と称して1〜2週間の座学をやって、あとは現場で覚えてください、という形です。
私たちが違うと言い切れるのは、現場に出す到達基準を持っているからです。何ができるようになったら送り出すのか。そこが決まっているから、育成が終わらないまま人を出すことがありません。これは求職者にとっての安心であると同時に、お客様に対する品質の約束でもあります。
3. 理由②:入社前から、もう始まっている
内定を承諾した方には、入社日を待たずに研修が始まります。全10章の入社前研修です。
さらに、入社前にヒアリングの時間を取ります。今どこまで分かっていて、何が苦手で、どこを不安に感じているのか。それを聞いた上で、その人専用のカリキュラムを組み直します。全員に同じ教材を配って終わり、にはしません。
入社前研修を受けている段階でJava Silverを取得する方もいます。入社初日に「今日から学びます」ではなく、「もう半分登ってきました」の状態でスタートできる。この差は、入社後3ヶ月で驚くほど開きます。
そして何より、入社前の不安な時期に、会社と接点が切れない。これが効きます。内定から入社まで放置される数ヶ月は、求職者にとって想像以上に不安な時間です。
4. 理由③:一人で現場に放り込まない
若手がIT業界で潰れる典型的なパターンは、「一人で客先に配属され、誰にも聞けないまま数ヶ月が過ぎる」です。
私たちはここに二つの手を打っています。
ひとつは4名体制のフォロー。研修担当・営業・事業責任者・先輩エンジニアの4人が一人の若手に関わります。技術のことは先輩に、現場の人間関係は営業に、キャリアは責任者に。相談先が一つしかないと、その相手と合わなかった瞬間に詰みます。
もうひとつは現場の体制化です。同じお客様先に複数名で入る形を意図的に増やしてきました。現在、2名以上が在籍している現場が5社。最大で7名のチームができている現場もあります。
隣に同じ会社の人間がいる。それだけで、若手の現場の生存率は変わります。
5. 理由④:3年後の地図を、入社前に渡す
若手が辞める理由は、「今がつらい」だけではありません。「この先どうなるのか分からない」が同じくらい効きます。
なので私たちは、選考の段階でキャリアパスを提示します。
下流工程 → プログラマ → システムエンジニア → プロジェクトリーダー候補
これを「3年後まで」の時間軸で最初に共有します。入ってから察してもらうのではなく、入る前に見せる。
そしてこれを支えるのが、評価制度です。以前の私たちの評価は、正直に言えばブラックボックスでした。何をどう頑張れば評価されるのか、本人から見えなかった。ここを全面的に作り直し、透明性のある制度として本運用を開始しました。
評価の基準が見えることは、「頑張れば報われる」の前提条件です。
6. 理由⑤:頑張りが、ちゃんと返ってくる場がある
制度として3つ動いています。
資格おめでとう金
会社が指定した資格、または会社の成長に寄与すると判断した資格に合格した場合、受験料を会社が全額負担します。制度開始から間もなく受給者が出ました。「勉強してえらいね」で終わらせない、というだけの話ですが、この差は大きいと思っています。
月1回の帰社日・技術交流会
SESで働いていると、会社の仲間と会わないまま半年が過ぎます。月に一度、全員が集まる日を作っています。会社からの報告だけでなく、エンジニア同士が技術を持ち寄る場です。
評価と切り離した月1回の1on1
ここが少し変わっているところです。1on1を評価面談にしません。評価と紐づいた瞬間、人は本音を言わなくなるからです。査定と関係のない場所で、困っていること・やりたいことを話せる時間を、毎月確保しています。
7. そして今、「上流に触れる場所」を自分たちで作っています
若手エンジニアの多くが直面する壁が、「下流工程から抜けられない」です。テストと製造だけを繰り返して数年が過ぎる。これはSESという業態が構造的に抱える課題で、きれいごとでは解決しません。
なので私たちは、自分たちで場所を作ることにしました。自社開発です。
社内の研修プラットフォームである「SkillBridge」を、外注せず内製で開発しています。技術構成はSpring Boot × Next.js × MySQL。設計書のレビューを回し、スプリントを切って、要件から実装まで自分たちで進めています。
ここには、経験の浅いメンバーも入っています。客先の案件では「まだ早い」とされる設計や仕様の議論に、自社開発なら関われるからです。研修の仕上げを自社案件で行うのも同じ考え方です。お客様の現場に出る前に、実務を一度経験してもらう。
若手に上流をやらせたい。でも客先では任せてもらえない。だったら自分たちの案件でやればいい。単純な話です。
8. まとめ:若手が多いのは、目的ではなく結果です
ここまで5つ挙げてきましたが、私たちは「若い会社にしよう」と思って若手を採っているわけではありません。
育てられる仕組みがあるから、経験の浅い人を採れる。
入ったあとに放置しない体制があるから、その人が残る。
残った人が育って、次の若手を教える側になる。
この順番でしか、若い組織は作れないと思っています。逆に言えば、仕組みのないまま若手だけを採ると、数年後に誰もいなくなります。
もしあなたが今、「経歴に自信がない」「これまで真剣に勉強してこなかったけれど、このまま終わりたくない」と思っているなら、話を聞かせてください。私たちが見ているのは、これまでの経歴ではなく、これから何をするかです。
そして、私たちと取引をご検討いただいている企業のご担当者様へ。ここに書いたことは、そのまま**「途中で人が抜けない体制」**の説明でもあります。育成と定着は、採用のための施策ではなく、品質のための投資だと考えています。
